恋ひわずらふ帝~御簾の奥、ただ君を想う~
その眼差しには、励ましと、ほんの少しの期待が宿っていた。

そして百合様がすっと立ち上がり、私の和歌を胸に抱えたまま、静かに清涼殿へと向かっていった。

——届けられる。私の気持ちが。

ひとり残された私は、もう一度、先ほどの帝の和歌を心の中でそっと詠み直した。

帝は私に恋をしてくださっている。

きっとこの恋は、上手く行く——そう信じたい。

やがて、廊下を渡る足音が戻ってくる。

「百合様。」

声をかけると、百合様はすぐに指を口元にあてた。

「しっ……」

彼女は小さな声で、私の耳元に囁く。

「帝の……思し召しです。」

「えっ?」

「——今宵、清涼殿でお待ちとのこと。」

胸が一気に熱を帯び、足元から力が抜けていくのを感じた。

夢だと思っていた恋が、現実へと歩み出そうとしていた。

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