恋ひわずらふ帝~御簾の奥、ただ君を想う~
それは、ある大雨の日のことだった。

天候が急変し、雨戸を閉める間もなく、洗濯場の簀子(すのこ)に干していた衣が風にあおられていた。

私は慌てて布を抱え、濡れないよう部屋の奥へと急いだ。

そして――その時だった。

御簾の向こう、普段は近づくことのない回廊の奥から、静かに誰かの足音が聞こえてきた。

ふと振り返った私の前に、雨に濡れた一人の殿方が現れた。

どこかの高貴なお方だろう。

その人は、濡れそぼる髪から雫を滴らせながら、静かにこちらを見ていた。

(……なんて、綺麗な人)

気づけば、私はその凛とした佇まいに、まるで魂を吸い込まれたように立ち尽くしていた。

羽織の下はずぶ濡れで、体の線が透けて見えるほど。きっと、相当寒いだろう。

気づいた時には、口が動いていた。

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