恋ひわずらふ帝~御簾の奥、ただ君を想う~
衣を解くと、熱を帯びた夜気が肌をなぞる。湯船に足を沈めると、香り立つ白檀の湯気がふわりと包み込む。

「……綺麗な体をしている。」

背後から百合様の声が、まるで湯よりも温かく届いた。

「ありがとうございます。」

頬に火が差す。

百合様は湯をすくい、私の背中にそっと流した。

指先が肩をなぞり、細やかに泡立てられた布で背を洗ってくださる。

その一手ごとに、清涼殿で待つ帝の面影が胸に浮かび、心臓の鼓動が早くなっていった。

「あの、百合様……夜伽の際は、私はどうしたら……」

湯に身を沈めたまま問うと、百合様の手が一瞬だけ止まった。

「春野は、まだ乙女か。」

「……はい。」

殿方を受け入れたことは一度もない。

「では、帝の仰せのままになさればよい。帝は何事もお知りじゃ。」

「……はい。」
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