恋ひわずらふ帝~御簾の奥、ただ君を想う~
差し出された一枚の布を受け取り、石鹸を泡立てる。

指先が小さく震えるのを、どうにか悟られぬようにした。

「寝着を着ていては洗えないね。」

その言葉とともに、帝はためらいなく寝着を肩から滑らせた。

白磁のような肌が湯気の中に浮かび、息が止まる。

思わず目を逸らしかけて、また見てしまう。

「……たくましいお体ですね。」

震える声で告げると、帝は微かに口元を緩められた。

「ああ、狩りをするせいかな。」

何気ないやり取りのはずなのに、私の手は確かに帝の肌をなぞっている。

泡の下から伝わる温もりに、心臓が早鐘を打つ。

触れるたび、全身が熱くなるのを、もう抑えることはできなかった。

「湯殿にいるということは、今夜の誘いを受けてくれたのだね。」

帝の静かな声に、私の手がぴたりと止まった。

「……はい。」

そうだ。私はこれから、帝に抱かれる。胸の奥が熱く、そして怖い。
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