婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
「いや、俺は……魔導具に興味はあるが、作ったり考えたりすることはできない。だが、新しい魔導具が出てくると、使ってみたくなるし、どういう仕組みで動いているのかとか、そっちに興味がある」
「あぁ。いますよね、そういう人。新しい魔導具をすぐに買って、使って、分析される方。私たち、開発者の立場からすると、そうやって興味を持っていただけるのが、とても嬉しいですけど。たまに、間違った解釈をされると悔しくもなります」
 セリオが魔導具に興味がない人間でなくてよかった。中には、まったく興味がありませんという人間がいる。そういう人と話をするには、エステルも何を話題にしたらいいかがわからない。父親の側で魔導具のことばかり考えていたから、社交は得意ではない。
 だから王太子妃教育でもっとも大変だったのが、社交性を高める教育だった。知識も礼儀も作法も問題ないエステルは、毎回社交性を高めるための模擬茶会では苦労したものだ。何かとすぐに魔導具の話と関連付けしようとするエステルを、教師は「違う話題にしてください」と何度も注意していた。
 そんな苦労も、今となってはいい思い出かもしれない。ここにいれば、苦手な社交を無理してまで頑張る必要はないし、大好きな魔導具に囲まれて暮らすことができる。
< 103 / 265 >

この作品をシェア

pagetop