婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
 エステルにはよくわからないが、セリオはどこか安心したようにも見える。
「魔導具で困ったことがあればここに来ればなんとかなりますから。私かアビーさんが対応しますので」
「わかった。俺としてはできれば……」
 アビーが工具を使い始めたため、言葉の続きはその音にかき消された。
「では、次の場所に案内しますね。今、私は、除雪魔導具の片づけ中でして……」
「除雪魔導具?」
「はい。ここアドコック領は、冬にたくさんの雪が降りますから。雪かきが大変な作業なんです。それを楽にするために魔導具を作りました。では、アビーさん、また後で」
 部屋を退出する前にアビーに声をかけてみたが、それが彼女の耳に届いているかどうかはわからない。これも形式的なものだ。
 今度は階段を上がり、外に出る。
「大きな魔導具を作るときは、作業効率だったり、持ち運びなどを考えてこちらの小屋で作業をしています」
 除雪魔導具を、アビーの巣で作るのには無理があった。あそこで設計や小さな実験はできるが、実際の組み立てには場所が狭いため、もう一つ作業場をギデオンに用意してもらったのだ。ギデオンも「そういうことなら」と、物置の一つを空けてくれた。
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