婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
「あなた。もっと言い方というものがあるでしょう? ただでさえエステルは落ち込んでいるのに」
 ヒルダがぴしゃりと言ってのける。
「ああ、悪かった。いや、そういう意味ではなく……まあ、あれだ」
 そこでモートンは取り繕うかのように、軽く咳払いをする。
「セドリック殿下との婚約の件が少し落ち着くまで、王都から離れたほうがいいだろうと、そう判断したんだ。私たちは決してエステルを追放したいとか、そう思っているわけではないよ?」
「で、ですが、お父様。私は、学園も退学になって……挙げ句、セドリック様との婚約も……」
 エステルのその先の言葉は涙に呑み込まれた。
 ヒルダがやさしく背を撫でてくれる。
「えぇ……わかっていますよ。あなたは悪くありません。殿下とは……そう、そうね。気持ちがすれ違ってしまったのよ」
 母親のぬくもりを感じれば感じるほど、目の奥が熱くなって、次から次へと涙が溢れてくる。
「お母様……」
 そろそろ成人を迎えるエステルだというのに、幼子のようにヒルダにしっかりと抱きついて、声をあげて泣き始めた。
< 13 / 265 >

この作品をシェア

pagetop