婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
 それでも歯切れは悪い。だが、これ以上問いただしても、彼は何も言わないだろう。
 ――バシャアッ!
 水の跳ねる音がした。
「ちょうど網を引いているところだな」
 三人の男性が川の中に入り、手にしている網を引き寄せていた。網にかかった魚が、ビチビチと跳ねて、活きのいい音を立てる。
 初めて見る光景にエステルは釘づけだった。あっという間に網がたぐり寄せられ、ざっと見ても数十匹の魚が網の中にいる。
「どうだ? 今年の漁は」
 ギデオンが声をかけると、魚を捕っていた男たちは、笑顔で挨拶をする。
「こんにちは、領主様。えぇ、見てのとおりですよ」
 そんな彼らの視線は、ギデオンからエステルとセリオに移る。
「王都からの客人だ。今、領地内を案内している。エステルとセリオだ。エステルは魔導職人だ」
 そこで一人の男が「あ」と声をあげる。
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