婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
「失礼します、エステルです」
 名乗って室内に足を踏み入れれば、セリオの姿もある。彼はこうやってギデオンと一緒に行動することも多く、書類仕事なども手伝っているらしい。
「ギデオン様。手紙をお願いしたいのですが」
「ああ。ヘインズ侯爵宛か?」
「はい。今、手がけている『でんわ』なのですが、私とアビーさんだけではもう手が回らなくて……。父の力を借りたくて、応援を頼みました」
 すると、なぜかセリオが肩をピクリと震わせた。
「エステルは、その『でんわ』を王都にも普及させるつもりなのか?」
 真剣な眼差しで、彼が問いかけてくる。
「そうですね。いずれは、そうしたいなと思っていますけど。今はまず、こちらにいる皆さんの分をなんとかしてあげたいなと……」
 セリオは腕を組む。
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