婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
 どこかげんなりとしたアビーが言った。
「では私が持っていきます」
 いつもであれば、まだまだ製作が残っていたから他の人に頼んで渡してもらっていた。しかし、これが最後。となれば、ここは自分の手で渡したい。
「アビーさん、昨日も徹夜でしたよね? 今日はゆっくり休んでください」
「あ、わかる?」
 おどけてみせたアビーだが、目の下には隈がはっきりとしている。
「わかりますよ」
「エステルを誤魔化せないってことは、相当酷い顔をしてるのね。じゃ、悪いけど、私は寝るわ。それ、ジャックのところによろしく」
「はい、いってきます。アビーさんも、寝相悪くてソファから落ちないようにしてくださいね。もしくは、今日くらいは自分の部屋で寝たらどうですか?」
「やだ。部屋に戻るのが面倒くさい」
 アビーが部屋に戻らない理由はそれなのだ。
「わかりました。では、いってきます」
 すでにソファにごろりと横になったアビーは、ひらひらと手を振ってエステルを見送った。
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