【電子書籍化】婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
 そして女性はキョロキョロと周囲を見回し、誰もいないのを確認するとほっと息をついて「では、また」と頭を下げて去っていく。
 彼女と別れたエステルは、『でんわ』を胸に抱えて、ジャックの家へと急いだ。
 ジャックは家にいた。ちょうど畑仕事の合間の休憩に戻ってきたらしい。
「遅くなってしまってごめんなさい」
「いえいえ、わざわざありがとうございます。これで、集落にいる母と弟と連絡ができます」
 ジャックの家族は集落で暮らしている。やはり離れて暮らす家族がいれば『でんわ』で連絡を取りたくなるのだろう。エステルだって、王都にいる父と話がしたいと思う。
 だが、その『でんわ』を父に送る術がない。誰かに頼んでというのは、ギデオンが禁止している。それは他に流出するのを防ぐためだとも聞いていた。
 だから家族に『でんわ』を渡すためには、彼らにこちらへ来てもらうか、エステルが王都へ向かうか。
 セリオは、ギデオンの友人の子で、ギデオンが信頼する人だから『でんわ』を渡す許可ももらえたのだ。
 セリオには渡せた『でんわ』が家族は手にすることができない。
 城塞へと戻るエステルは、複雑な気持ちだった。

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