婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
 エステルとセドリック。一台ずつ持って、まずはこの二台の間で通話のやりとりをする。これがうまくいけば、各『でんわ』に魔力番号を割り振って、指定された番号の『でんわ』と通話ができるようにすれば――。
 それをセドリックに提案したとき、彼は『くだらない』と吐き捨てた。
『わざわざ会わないときにまで、話をする必要はないだろう? 話をしたいから顔を合わせる。そうじゃないのか?』
 セドリックの言うことも一理ある。相手の顔をきちんと見て言葉を伝えることも大事だ。
『ですが、遠くにいるからこそ、声が聞きたいと思うときはありませんか?』
 こめかみを震わせたセドリックは、それ以上何も言わなかった。だけど『でんわ』には興味がないのか、エステルが作る魔導具を気にする様子も見せなかった。
 魔導具開発展が日に日に近づき、試作機ができたときは父親にも報告した。モートンは『これは画期的だ』『これなら優勝間違いなしだ』と褒めてくれたが、まさかその魔導具開発展に参加できなくなるとは、想像していなかった。まして、学園を退学など。
「はぁ……」
「お疲れでございますか?」
< 22 / 265 >

この作品をシェア

pagetop