婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
 それでもエステルが王太子妃教育で忙しくすればするほど、セドリックとの物理的な距離が離れ、彼はジュリーと一緒にいるようになる。肩を並べる二人の姿を見るたびに、エステルの心は悲鳴を上げた。
 どうしたらセドリックは昔のようにエステルに心を傾けてくれるだろうか。
 ジュリーよりも秀でたところがあれば、見直してくれるだろうか。
 エステルが誰にも負けないと誇れるものは、魔導具製作だろう。年に一回、国内の各校の代表が能力を競い合う全国学生魔導具開発展が開催される。そこで優勝すれば、国の代表として、大陸大会への出場権を手に入れられるのだ。
 国の代表に選ばれたら、セドリックの気持ちも戻ってくると信じて、エステルは以前よりも魔導具製作にのめり込むようになった。
 開発展では「携帯電話」のような通信魔導具を発表しようとしていた。その名も『でんわ』だ。電話ではなく伝話という意味の『でんわ』である。
 仕組みは電話と同じ。それを、魔石を使って実現させようとしていた。しかし、いきなり不特定多数との通話の仕組みを構築するのは難しい。まずは、無線機のようなものから始めようと思った。
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