婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
 アビーの言葉は軽い調子だが、その内容にエステルは眉をしかめる。それでも、その分析に同意する。
「そういえば……」
 そこでエステルは、ヴァサル国が王弟派と王子派で揉めているようだと口にする。
「なるほどね。他国の王権争いに巻き込まれるなんてまっぴらだけど、自分たちの命を守るためにも従う振りをしましょう。作戦は、命大事によ!」
 食事を終えた頃、扉が再びガチャリと開き、先ほどのリーダーの男が部屋に入ってきた。今度は腕に分厚い資料の束を抱えている。
「おまえたちに作ってもらいたいのはこれだ」
 男は乱暴に資料を床に放り投げ、紙束がバサバサと散らばった。
「はぁ? もしかして床に落ちた資料を、私に拾えとでも言ってるのかしら?」
 アビーの声は鋭く、挑発的だ。エステルは彼女の大胆さにハラハラしてしまう。
「私たちに魔導具を作ってもらいたいなら、きちんと作業台を用意しなさい。そんな床にはいつくばって作業したら、腰が痛くなって仕方ないわ。どれくらいの規模のものを作らせようとしているのかわからないけれど、私たちにとっていいベッドと椅子は必須なの」
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