婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
「そうね。今はとりあえず、この指示に従っている振りをしましょう。何度も言うけど、あいつらは魔導具に詳しくないわ。この指示書を見てもわかる。ド素人が妄想の中で考えたもの」
 アビーの言うとおりだ。指示書は、魔導具の製作経験がない者が書いたと一目でわかるほど、雑で非現実的だった。
「とりあえず、この指示書のとおりに魔導具を作っている振りをして、なんとか時間を稼げば、きっとギデオンたちが探しに来てくれると思うのよね」
 エステルとアビーが魔導具室から揃って姿を消したとなれば、ギデオンも異変に気づくだろう。ましてや、あの部屋が荒らされた直後なのだから。
「そうですね。ギデオン様たちを信じます……あっ」
 エステルは突然声を上げ、腰に下げた小さな工具入れに手をやった。そこには、試作品の『でんわ』を入れていたことを思い出したのだ。
 ペレの集落への遠出以来、エステルはいつでも魔導具を分解できるようにと、コンパクトな工具入れを腰に付けていた。
 一方、アビーは普段ほとんど出歩かないため、そんなものは持っていない。
< 236 / 265 >

この作品をシェア

pagetop