婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
「エステル!」
 アビーが駆け寄り、エステルをぎゅっと抱きしめた。彼女の腕は力強く、まるで二度と離さないとするかのよう。
「アビーさん」
 エステルも負けじとアビーを抱き返すが、安堵と緊張が交錯する。
「アビーさんのおかげです。この魔導具。けっこう威力が強いんですね。あの人、生きてます?」
「大丈夫、大丈夫。筋肉を強制的に収縮させて動けなくするだけだから。命に別状はない! たぶん……」
 アビーの自信満々な口調に、最後の「たぶん」が小さな不安の影を落とす。エステルは思わず苦笑した。
「エステル、無事か?」
 聞き慣れた声に、エステルははっと顔を上げた。騎士団の後列から、セリオが現れる。
「セリオさん……どうしてここに?」
 やはりセリオだった。エステルは驚きから目を丸くする。
「おい、セドリック。エステル嬢たちは?」
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