婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
 それから三か月後、ヴァサル国の王城でジュリアンの立太子の儀が盛大に執り行われた。
 隣国ターラントからは、セドリックとその婚約者であるエステルの姿もあった。
「何年後になるかわからんが、おまえがヴァサルの王か……」
 セドリックがジュリアンに軽く毒づくと、エステルが笑顔で彼をたしなめる。そんな二人のやりとりは、もはや見慣れた光景だった。
 ジュリアンはそんな二人を眺め、ほんの少し羨ましそうに目を細めた。王太子という重責を背負いながらも、心に余裕が生まれた証拠だろう。
 その後、ターラント国とヴァサル国の間では、魔導具の輸出に関する新たな取り決めが結ばれた。ターラントからヴァサルへ輸出される魔導具には、使用目的の申告と軍事転用を禁じる条項が設けられた。つまり、「魔導具は正しく使いましょう」という約束だ。
 さらに、ヴァサル国内でも魔導具の開発や製造を学べるよう、ターラント国が技術者を派遣する体制を整えた。これは、ヴァサル国への魔導具の技術支援の第一歩だった。
 こうした国と国を結ぶ関係で、必要不可欠となったのがエステルの開発した『でんわ』だ。今では、各『でんわ』に番号が割り当てられ、相手の番号を打ち込むだけで、どこにいる誰とでも会話ができる。
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