婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
「そうか……」
「ギデオン様は、アドコック領での父のような存在でした。どこか私の父と似ています」
 エステルが優雅に微笑むと、ギデオンはもう一度「そうか」と呟き、目を細めた。
「モートンとは、年も近いからな。さすがに、エステルが俺の嫁候補と噂されたときは驚いたが」
「そんなこともありましたね。」
 エステルはくすりと笑った。今となっては、すべてが愛おしい思い出だ。
 音楽が穏やかに途切れ、エステルとギデオンは互いに礼をしてダンスを終えた。ギデオンはエステルをセドリックの元へ丁寧にエスコートした。
「エステル、セドリック殿下と幸せにな」
「はい、ありがとうございます」
 ギデオンの温かい言葉に、エステルはセドリックと顔を見合わせ、幸せに満ちた笑顔で応えた。

【完】
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