婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
 だが、改革派はそうではないらしい。何がなんでも今の国王を引きずり下ろし、ジュリアンの命すら奪おうとする、少々過激な考えの持ち主なのだ。
 平和的話し合いで解決、が通じない集まりだった。
「口うるさい小姑とはなんだ? おまえのせいでこっちはいい迷惑をしてるんだよ」
 先ほどからセドリックの怒りは静まらない。
 それもそのはず。大好きなエステルに、婚約解消を告げたからだ。そのときのエステルの泣きそうな顔を見たときには、抱きしめて慰めてやりたかった。だが、それをしてはならないと己に強く言い聞かせ、彼女を突き放した。
「あぁ……エステルに嫌われた。もう絶望的だ……」
 セドリックは両手で顔を覆い身体を丸める。
「だから、それはゴメンって。だけど、セドリックが言ったんだろ? このまま婚約関係を続けていたら、エステル嬢を巻き込んでしまうって」
「俺がおまえのことに巻き込まれているからな。何がなんでもおまえを引きずり下ろしたい改革派は、おまえの周囲の人間だって狙ってくるだろう? そうなれば、真っ先に俺が狙われる。俺がおまえから手を引けと脅すとなれば、エステルを使ってくるのが目に見えていた。彼女を危険なことに巻き込むくらいなら、手放すしかないだろ!」
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