婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
「お嫁さんになってくれる人って、エステルさまじゃないの?」
 ギデオンもその話は初耳だったようだ。
「なんでそんな話になっているんだ?」
 子ども相手のためか、ギデオンもいつもより口調は穏やかだった。
「だって、みんな言ってるもん」
 ね~、と子どもたちはみんなで顔を見合わせている。
 ここまでくればギデオンも察する何かがあったようだ。
「わかった。どこかでそんな噂があるようだな。だが、残念ながら俺とエステルの結婚の予定はない」
「え~」
 一気に子どもたちから不満の声が上がった。
「エステルは俺の友人の娘だ。大事なお客様なんだよ。だからおまえたちも、仲良くしてやってくれ」
「え~。お嫁さんじゃないの?」
「エステルさま、ずっとここにはいないの? おうちに帰っちゃうの?」
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