婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
 口々に子どもたちが騒ぎ出し、エステルもどうしたものかと困惑する。
「そうだな。いつかは家に帰るだろう。いつまでもここに、というわけにはいかないな」
「え~」
 不満が一気に高まった。
「だが、それはおまえたちも同じだろう? これからどうなるかだなんて、誰も知らない。王都で学ぶ者も、隣国で働く者もいるかもしれない。いつまでもここにいたい、そんな理由で、未来をしばってしまってもいいのか?」
 子どもたちには難しい話かもしれない。だがギデオンの真剣な眼差しと、未来を期待する思いが彼らにも届いたようだ。幼い子らも、しゅんとどこか寂しそうな表情を浮かべる。
 それを見てギデオンは、微かに笑みを浮かべた。
「エステルがここにいる間は一緒に過ごせるわけだろう? 終わりのない時間なんてない。限りある時間をエステルと一緒に楽しめばいい」
 そこでギデオンがしゃがみ込み、雪を手に取った。それをぎゅぎゅと丸めて玉を作っている。
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