婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
「え? 相手って、何をですか……?」
「別に侍女のような仕事をしろとは言っていない。話し相手とか、まぁ……そんな感じだ」
 なるほど、とエステルは心の中で手を打った。
 恐らくギデオンは、エステルにセリオと友達になれと言っているのだ。
「はい。わかりました。私もこちらに来て、半年ほどしか経っておりませんが、セリオさんよりはここのことをわかっているつもりです。何かわからないことがありましたら、遠慮なく聞いてください」
「よろしく頼む」
 セリオが手を差し出してきた。これは、握手を求められているのだろうか。
 あまりエステルの中では異性との握手は経験のないものだが、こうやって好意的に関係を築こうとする彼の気持ちを無下にはできない。
 何よりもエステルは王太子の婚約者ではないし、この領地の魔導職人だ。
「よろしくお願いします」
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