私たちの関係は変わらないと思っていた。

「…あの女自分がこの世で一番偉いと思ってる傲慢が服着て歩いてるみたいな奴だった。生理的に無理、香水くせぇし」

嫌悪感を露わにする大我。例の美人を相当嫌っていることが伝わってきて、あの時感じた胸の痛みや悲しみが癒えていく。その後、大我は女性を追い返し従兄弟に抗議の電話をした。どうやら大我の縁談は彼の両親が独断で進めているらしい。大我の兄の醜聞のせいで苦しい立場に立たされ、今の地位を守るために大我を利用しようとしてるようだ。向こうが実力行使に出た場合、明の会社を辞めさせ成瀬総合病院の事務方に就職させられただろう、と大我は推測した。清々しい程に自分本位な人達で一ミリも同情出来ない。

「従兄弟が親のことはどうにかしてくれるらしい…で?俺に恋人が居ないってことは理解出来たか?」

「…うん、ごめんね突然避けたりして」

縮こまり謝る綾香に初めの険しい雰囲気は鳴りを潜めた大我が、困ったように眉を下げた。

「本当だわ、急に連絡取れなくなった俺がどれだけ心配したか…そもそもすぐに『あの女誰』って聞けばありのままを答えたぞ。疾しいこと何もないんだから」

正論をぶつけられぐうの音も出ない。しかし、いざ大我が女性といる場面に遭遇すると「問いただす」という選択肢は頭から消える。もし本当に恋人だったら?と考えたら怖くて逃げることしか出来なくなるのだ。綾香は自分が大我に相応しいとは思えないから。

「つーか、これから綾香に告ろうって時に他の女と何てあり得ないだろ」

「……ん?今何て」

綾香に都合の良い言葉が聞こえた気がしたが、遂に耳がおかしくなってしまったか。目をパチクリさせる綾香に大我は呆れたように笑った。

「…本当に覚えてないんだな。吉田行った日綾香俺に告ったんだよ。小学生の頃から好きだって」

「は!?」

衝撃の事実に綾香は思わずテーブルに手を付いて前のめりになる。嘘を吐いているようには見えない。綾香は頭が痛くなってきた。

「え、え…全く覚えてない…」

「次の日電話した時の反応で分かったよ。で、俺は綾香のこと異性として見たことなかった。だから考える時間が欲しいと言おうとしたらお前断られるって早とちりして、お試しで良いから付き合って、自分のことを異性として見れなかったら諦めるからって。ただ考えるより、実際に付き合ってみた方がちゃんとした答えが出せると思ってOKしたんだよ」

なのに肝心の綾香はそのことを忘れていた。だから如何にもな理由をでっち上げて、当初の綾香の要望に近い「擬似交際」を提案したのだと言う。綾香の頭は怒涛の情報量にパンク寸前だ。

「で…実際恋人っぽく過ごしてみたら…俺綾香のこと女として見れるって気づいたわ」

大我の言葉に綾香の顔がボッと赤くなるが、彼の告白は止まらない。

「気づいたというより、気持ちに蓋していただけで結構昔から綾香のこと好きだったみたいなんだよな。やっと自覚したというか」

「……どういうこと?…私のことずっと好きだったって聞こえるんだけど」

「だからそうだって」

「……いつから?」

「会ってすぐだと思う。あの頃の俺愛想ないし口数も少なくて怖かっただろ?それなのに綾香懐いてくれたからさ、嬉しかったんだ。初恋だよ」

「でも、他の人と付き合ってたよね。今だから言えるけど私結構ショック受けてたから」

口を尖らせ、過去に傷付いた事実を明かすと大我はバツが悪そうに髪を掻いた。
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