私たちの関係は変わらないと思っていた。
「お待たせいたしました…それ飲んだらさっさと帰って寝ろ」
1オクターブ下がった声で告げられた内容に綾香はムッとして言い返す。
「ちょっと言い方…私だから良いけど他のお客さんにそんな態度取ったら駄目だからね」
「当たり前だ、綾香以外にこんなこと言わない」
なんでもないことのようにさらりと言われると、綾香はドキッとしてしまう。その度に勘違いするな、と自分に言い聞かさせるまでがセットだ。そんな本心を隠して綾香は笑う。
「本当に?大我くん口悪いから心配だよ」
「馬鹿にすんなよ、これでも学生時代と合わせて9年接客業やってんだからな。そんなヘマしない」
「馬鹿にはしてないよ、ただ普段の大我くんと接客中の大我くん別人過ぎてたまに笑いそうになるってだけ」
「…正直にどうも、ちょっと馬鹿にしてるだろ」
呆れたような口調の大我だが、全く怒ってないのは柔らかい声の響きと表情で丸分かりだ。そして大我は徐に綾香の頭に手を置くと、控えめな手つきで撫で始めた。身体中に緊張が走り、目線を大我に合わせる。彼はとても優しい顔をしていた。