月夜に吠える、君の名を
第11話 牙の痕
翌朝、村全体が騒がしかった。裏山の麓で、飼われていた山羊が何匹も殺されて見つかったのだ。
首筋には鋭い牙の痕。
血はすっかり吸い尽くされていたという。
【また化けオオカミや……】
《この前、村に来たあの女も巻き込まれるんやないか》
耳に刺さるような囁きが、紗羅の方へ向けられる。
その視線の中には、憎しみと恐れが入り混じっていた。
昼過ぎ、健は姿を見せなかった。
不安になって屋敷の奥を探すと、暗い部屋の中で彼が座り込んでいた。
髪は乱れ、服には泥がつき、手の甲には爪で引っ掻いたような赤い跡。
「健……昨夜、どこに?」
問いかけると、彼は答えず、ただ低く呟いた。
『……俺やないって、言い切れへん』
その声に、背筋が冷える。
『気づいたら、外におって……血の匂いがして……』
健は顔を覆い、肩を震わせた。
『もし俺が、紗羅を襲ったら……』
言葉を遮るように、紗羅はそっと彼の手を握った。
「それでも、私は離れない」
健の瞳が揺れる。
その奥に、獣のような光と、人間の悲しみが同時に宿っていた。
首筋には鋭い牙の痕。
血はすっかり吸い尽くされていたという。
【また化けオオカミや……】
《この前、村に来たあの女も巻き込まれるんやないか》
耳に刺さるような囁きが、紗羅の方へ向けられる。
その視線の中には、憎しみと恐れが入り混じっていた。
昼過ぎ、健は姿を見せなかった。
不安になって屋敷の奥を探すと、暗い部屋の中で彼が座り込んでいた。
髪は乱れ、服には泥がつき、手の甲には爪で引っ掻いたような赤い跡。
「健……昨夜、どこに?」
問いかけると、彼は答えず、ただ低く呟いた。
『……俺やないって、言い切れへん』
その声に、背筋が冷える。
『気づいたら、外におって……血の匂いがして……』
健は顔を覆い、肩を震わせた。
『もし俺が、紗羅を襲ったら……』
言葉を遮るように、紗羅はそっと彼の手を握った。
「それでも、私は離れない」
健の瞳が揺れる。
その奥に、獣のような光と、人間の悲しみが同時に宿っていた。