月夜に吠える、君の名を
第8話 夜明けの残り香
鳥の声で目を覚ましたとき、窓の外はもう白み始めていた。畳の上、毛布にくるまって横たわるのは……
人間の姿に戻った健さんだった。
乱れた髪、浅い呼吸、額にうっすら浮かぶ汗。
「……健さん」
声をかけると、ゆっくりと瞼が開く。
黄金だった瞳は、もう元の深い黒に戻っていた。
『……見たんやな、全部』
その声は低く、諦めの色を含んでいた。
あんたは少し迷ってから、頷いた。
『……怖くなかったんか』
「正直、怖かった。でも……それ以上に、あなたが苦しそうに見えた」
健は一瞬だけ視線を逸らし、手で顔を覆った。
『俺は人を傷つけるもんや。……いつか、あんたもそうなる。』
「それでも」
あんたは遮るように言った。
「それでも、私はあなたのそばにいたい」
健の指先が、微かに震えていた。
その手を、あんたはそっと包み込む。
体温が伝わり、二人の間に静かな時間が流れる。
障子の隙間から差し込む朝日が、彼の横顔を照らした。
その光はまるで……
長い夜の闇を少しだけ溶かすみたいやった。
『……アカンな。そんなこと言われたら、もう離せへん。』
健の口元に、わずかな笑みが浮かんだ。
けれど、あんたはまだ知らなかった。
この村で“離れられへん”という言葉が、どんな意味を持つのかを。
人間の姿に戻った健さんだった。
乱れた髪、浅い呼吸、額にうっすら浮かぶ汗。
「……健さん」
声をかけると、ゆっくりと瞼が開く。
黄金だった瞳は、もう元の深い黒に戻っていた。
『……見たんやな、全部』
その声は低く、諦めの色を含んでいた。
あんたは少し迷ってから、頷いた。
『……怖くなかったんか』
「正直、怖かった。でも……それ以上に、あなたが苦しそうに見えた」
健は一瞬だけ視線を逸らし、手で顔を覆った。
『俺は人を傷つけるもんや。……いつか、あんたもそうなる。』
「それでも」
あんたは遮るように言った。
「それでも、私はあなたのそばにいたい」
健の指先が、微かに震えていた。
その手を、あんたはそっと包み込む。
体温が伝わり、二人の間に静かな時間が流れる。
障子の隙間から差し込む朝日が、彼の横顔を照らした。
その光はまるで……
長い夜の闇を少しだけ溶かすみたいやった。
『……アカンな。そんなこと言われたら、もう離せへん。』
健の口元に、わずかな笑みが浮かんだ。
けれど、あんたはまだ知らなかった。
この村で“離れられへん”という言葉が、どんな意味を持つのかを。