涙のあとに咲く約束
 動物園内にあるフードコートで、藤堂さんが私たちの分の昼食を購入し、それに口をつける。
 真一くんが口の周りにケチャップをつけたまま、ホットドッグを頬張り、私がそれをティッシュで拭う。
 そんな姿を藤堂さんが優しく見つめている。

 これって、傍から見ると普通に仲良し親子に見えるかな。
 私たち、まるで本当に親子みたいだよね。
 私は内心そう思った。

 ……だけど、これは口に出してはいけない気持ちだ。
 藤堂さんには真一くんという息子がいる。
 真一くんの母親について、藤堂さんは何も口にしていない。
 藤堂さんの奥さんは……
 この前藤堂さんの家にお邪魔した時、荷物や食器など、それらしき女性の存在は見つけられなかった。
 けれど……
 
 家族のいる人に恋をしてはいけない。そう自分に言い聞かせながら、私は笑顔を作った。
 

 帰りの電車の中で、真一くんははしゃぎ疲れて、藤堂さんの膝に頭を預けて眠っていた。
 夕陽が電車の窓から差し込み、藤堂さんの頬を照らしている。
 二人の正面に座っていた私は、二人の姿が、まるで一枚の絵画のように見えた。
 真一くんの小さな寝息が、穏やかな時間の証のようで、車内のざわめきさえ遠く感じられる。

「今日はありがとう。本当に助かった」
 
 私の方を見ずに、窓の外を眺めながら藤堂さんが呟いた。
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