涙のあとに咲く約束
「松下さん、悪い。今日は……」

「いえ、私が勝手に来ただけです。すみません」
 
 きっとお母さんの訪問は予定外だったのだろう。
 動揺している藤堂さんに気を遣わせまいと慌てて立ち上がると、藤堂さんの目が一瞬揺れた。
 
「いや……別に。事前にアポなしでうちに来た母の方が悪いから、ごめん」
 
 その声は、思っていたよりも柔らかかった。
 藤堂さんのお母さんは、自分が余計なことを喋ったと思ったのか、「二人の顔を見ることもできたし、もう帰るわね」と言って家を後にした。

 食卓には先ほどお母さんが持ってきた煮物と、藤堂さんが作った味噌汁が並んでいる。
 真一くんが「いっしょにたべよう!」と私の手を引くので断れるはずもなく、席についた。
 
 箸を動かしながらも、頭の中では先ほどの話が何度も反芻される。

 事故の日、迎えに行けなかった藤堂さん。
 責任を感じ、甥を育て続ける彼。
 その重さを、私は今まで知らなかった。

 ふと見ると、藤堂さんが真一くんの茶碗にご飯をよそっている。その手つきは驚くほど自然で、穏やかだった。
 
「ほら、ちゃんと食べろ。野菜も」

「はーい」
 
 何気ないやり取りが、胸に刺さる。こんなふうに日々を過ごしている彼が、どれだけの覚悟でここまで来たのか……

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