仏の顔も三度までですわ!愛人と夫のツケ、すべて返していただきます
「ミラーネ、言葉づかいを直しなさい。礼儀作法で何を習ってきたんだ」

デルバートに叱責されたが、ミラーネはまったく堪えない。

「無礼な使用人に丁寧な対応をする必要はないと習いましたわ、お父様」

ミラーネの言葉に緊張した空気が走った。

「彼女はランドリックの乳母のシェリーナ・ロゼスよ。
シェリーナ、ランドリックを渡してくれる?」

場の空気を変えるために、私はシェリーナを紹介して話しかけた。
久々の再会なのに、嫌な雰囲気にしたくない。
私がシェリーナの前に立つと、いかにも嫌そうに、それでも理性は働いているのか、ランドリックを渡してきた。

「この人、自分で名乗りもしないの?そんな人を乳母にして大丈夫?」

ミラーネは引き下がる気はないみたい。
やれやれ…。

「ランドリックを抱っこしてたから、ちゃんとしたご挨拶が難しかっただけよ」

「大変失礼いたしました。シェリーナ・ロゼスと申します。
ランドリック様の乳母と教育役を仰せつかっております」

悔しそうにシェリーナがお辞儀をする。
シェリーナってランドリックの教育もするんだ…。そこまで教養のある人だったなんて知らなかったな。

「リフィール、ミラーネ、おいで」

私はランドリックを抱っこしたまましゃがんだ。
2人が駆け寄ってきて、ランドリックを覗き込む。

「かーわーいい!」

「髪の色がお父様といっしょだ」

ランドリックはいきなり賑やかな2人に囲まれてきょとんとしてる。
かわいいな♡

「そろそろ時間だ。行くぞ」

不機嫌そうにデルバートが言った。
さすがに娘たちの前ではシェリーナを庇えないよね。

「行きましょう」

私はランドリックを抱っこしたまま、ミラーネとリフィールを引き連れてデルバートの後に続いた。
その後ろをシェリーナが着いてくる。
そっか、今回は乳母としての役割があるから、披露パーティーにも出席するんだっけ。
屋敷の生活になればシェリーナと距離が取れると思っていたけれど、そうではないことに気づいて思わずため息が出そうになった。
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