恋愛はカットがかかったその後で
カメラが止まった裏
「___カーット!!!!」
監督の声と共にカットがかかる。ふーっと息を吐くと同時に、先ほど部屋を出て行ったはずの彼が戻って来た。
「本っ当に最高だね!2人の名演技には非の打ち所がないよ!!」
「「ありがとうございます」」
声がハモるが、今更気にしない。しかし監督は私たちのシンクロに、これまた嬉しそうに笑った。
「さすが幼馴染のMコンビ。2人の雰囲気が自然すぎてついつい見入っちゃうよ」
「あははっ、ありがとうございます」
言われ慣れた言葉を笑って流す。隣の幼馴染をチラッと見ると、これまた見慣れた反応で流していた。やっぱりそういう反応になるよね。
「それで2人は、」
「あの、監督。申し訳ないのですが、次の場面のご相談が…」
何かを言いかけた時、別の役者から相談を持ち掛けられた監督。 偶然のタイミングとはいえ、根掘り葉掘り聞かれないことに心の中で安堵する。監督は小さく首を傾げながらも、私たちには丁寧に言葉をかけてくださった。
「すぐに行くよ。…2人とも引き止めてごめんね。今日はもう上がってもらって大丈夫だから。また次の撮影の時によろしくね」
「分かりました。よろしくお願いいたします」
「本日はありがとうございました。お先に失礼いたします」
今日の撮影は以上だ。ドラマ自体はまだまだ続いていくが、今日の分はこれで終了。
すれ違うスタッフさんに挨拶しながらスタジオを出る。楽屋に戻ると、そこには待ってましたと言わんばかりにマネージャーが立っていた。