恋愛はカットがかかったその後で

「…え、何?」
「お疲れ様です」
「お、お疲れ様…」

怒っている雰囲気ではないものの、何か言いたげなマネージャー。その変な空気に、思わず顔を顰める。

「な、なに…?」
「明日、オフになりました」
「え?」
「だーかーらー!明日、オフです!!」

 マネージャーの言葉に、衣装を脱ぐのも忘れて詰め寄る。

「本当!?」
「本当です!!全力で空けさせてもらいました!!」
「敏腕マネ―ジャー!!愛している!!!」

 嬉しさのあまり抱きつくと、マネージャーは照れたように「えへへ」と笑った。

 
 高校卒業間近のタイミング。
 私は幼馴染の斎藤 湊(さいとう みなと)と、有名な芸能事務所のオーディションを受けた。言わば、記念受験。正直、若気の至りというか勢いというか…。受験が早く終わった私たちの、ちょっとした遊び感覚で受けたオーディション。
 
 しかし予想外なことに、あれよあれよと選考は進み、気づけば2人揃ってデビューを飾っていた。
『幼馴染』という視聴者が好きそうな組み合わせであることに加え、お互いの名前にMが入っていることから『幼馴染のMコンビ』なんて呼ばれている。

 最初こそ、「付き合っているのでは?」や「元恋人なのでは?」と噂されたし、マスコミも私たちに張り付いていた。でも、マンションでお隣さんであることも、撮影終わりに一緒に帰っていることも最初から当然のようにオープンにしていた私たち。世間は次第に「いい加減結婚してくれ」と言うようになり、マスコミも居なくなった。それもそれでどうかとは思うけれど。

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