恋愛はカットがかかったその後で
というわけで、完全なオフなんて半年振りぐらいだ。忙しいのは有難いのだが、私だって人間だ。無茶を承知で前からリクエストしておいて良かった。
「ちなみに湊さんもオフらしいですよ」
「え、まじ?ちょっと湊のところ、行ってきていい?」
「他のスタッフさんの邪魔にならないならいいですよ」
元気よく返事をして、楽屋を出る。そのまま早足で移動して、湊の楽屋に突撃した。
「湊ー、入るよ~」
「…あのさ、ノックとかしてくれない?もう少しで着替え始めるところだったんだけど」
「私は気にしないからいいよ。何なら着替えながらでもいいし」
「俺が良くないから。気まずいわ」
ゆるい会話をしつつも、早速本題に入る。
「私、明日オフなの。よかったら、今日一緒に飲まない?」
「珍しいな」
「でしょ」
「俺は…何だっけ?」
「湊もオフらしいよ。私のマネージャーが言ってた」
「あー、撮影がズレたんだったわ。…そうだな。折角なら飲むか」
湊は嬉しそうに頷いてくれた。こんな風に勢いで誘っても、すぐに応えてくれるところが流石だ。
「んじゃ、湊の家ね」
「なんで俺の家なんだよ」
「だって、湊の家の方が広く感じるもん」
「家の間取りは同じだろ」
「・・・私の家、物が散乱してるけどそれでもいいの?」
「俺の家で飲もう」
私が片付けが苦手なことを知っているからか、部屋が汚いという話を持ち出すとすぐに話がまとまった。湊曰く、掃除は得意ではないらしいが私よりはマシとのこと。失礼だな。
とりあえずいつも通り着替えたら集合する話を取り付け、自分の楽屋に戻る。湊は、少し呆れたように笑いながら、見送ってくれた。