恋愛はカットがかかったその後で
 楽屋に戻って飲みの予定ができた話をマネージャーにしたところ、訝しげに見つめられる。
 
「…それで、本当に付き合ってないんですか?」
「な、なに急に」

マネージャーが真剣な顔で尋ねてくる。

「お付き合いしている方が納得するぐらいの距離感じゃないですか」
「そうなの?」
「そうですよ。だって、お隣さんでほとんど一緒に居て…ご自身でも違和感ありません?」
「恋愛してこなかったからな~」

 一応真剣に考えてみるが、イマイチよく分からない。
 
 でも、これだけははっきりしている。
  
「でもまあ、確実に付き合ってないよ。今更って感じだし」
「今更?」
「だって、もう知り合って何年?保育園の時からの幼馴染だよ?」
「だからこそ、じゃないんですか?」

 衣装を回収してもらいながらも、小さく答える。
 
「だってさ、昔からずっと一緒にいるんだよ。だからこそ、今更恋人とか、そういうの恥ずかしくない?」
「いいじゃないですか。幼馴染の恋人ですよ!」
「うーん、なんていうかさ。恋人役のドラマをやりすぎて、どれが自分の本当の気持ちなのか分からなくなってきたんだよね」

 ポツリと言葉を零す。別にそれが悪いとは言わないし、それが売りだから仕方ない。ただ、
 
「湊も、多分そうだと思う。お互いにそんな気配はないし、このままで居られるならそれでいいかなって」
「そう、ですか」

マネージャーは、それ以上何も言わなかった。ただ、どこか納得していないような表情を浮かべていた。

「とりあえず、明日のオフを満喫させてもらうよ。何かあったら連絡してね」
「分かりました。くれぐれも飲みすぎて二日酔いにならないようにしてくださいね。折角のお休みなんですから」
「ありがとう。じゃあ、お疲れ様」
「お疲れ様です」

 帽子を被りながらスタジオの入り口に向かうと、すでに湊が待っていた。スマホを見ていた彼だが、私が近づくと気づいたようで小さく手を振ってくれた。

「お待たせ」
「俺も今来た所だから待ってないよ」
「あははっ、やさし」
「だろ?」

私たちは、慣れたように並んで歩き出す。スタジオを出て、タクシーで家の近所のスーパーまで向かった。

「開いててよかった」
「本当にな。酒とつまみ、何にする?」
「なんでもいいよ」
「うーん…ま、適当に買うか。多かったら分けて持ち帰ってくれ」
「承知~」
 
 少ないよりも多い方がいい、という理論の元、カートに容赦なくお酒やお菓子を乗せていく。カラフルなパッケージのポテトチップスや、チョコレート、そして缶ビールやワインボトルをかごに入れていく。そんな私を若干引いた目で見つつ、湊もカートに物を乗せていた。
 
「いや、買いすぎだろ」
「いいじゃんいいじゃん」
「……頼むから食いきれなかったら持ち帰ってくれよ」

 レジを通るたびにどんどん上がっていく値段。スーパーとは思えない値段に驚きつつも会計を済ませた私たちは、店を後にしたのだった。

< 5 / 10 >

この作品をシェア

pagetop