恋愛はカットがかかったその後で
零れ落ちた言葉
ガチャ
トントントントン
「ん、」
霞む視界。痛む頭に、怠い体まで揃えば、熱か泥酔の2択だろう。今回は後者。
「あ゛ー…」
今は何時だろう。湊と速いペースで飲んでいたことははっきりと覚えている。でもいつの間に寝たのだろう。わざわざソファーに移動させてくれたようだ。ご丁寧に毛布まで掛けてくれている。
「あ、起きてたか」
ひょこっと覗き込んできた湊は私が起きていることが予想外だったようで、目が合うと若干驚いたような反応を見せた。
「みなと、」
「おはよう。何か欲しいものはあるか?」
「水。あと、今って何時?」
「日付変わった午前1時23分。はい、これ水な」
体を起こしてコップを受け取る。ゆっくり飲むと、水の冷たさがよく染みた。
「ありがと。生き返った」
「そりゃよかった」
コップを受け取ってくれた湊の背中を見つめる。テーブルの上が綺麗になっている所から、片付けまでやってくれたらしい。何もかも任せきりで申し訳ない。正直、羽目を外して飲みすぎた。
「あの、本当にごめんね。ちょっとテンション上がって飲みすぎた…」
「いいよいいよ。俺も楽しかったし。美穂が気にすることじゃないから」
流しにコップを置いてからすぐに戻ってきてくれた湊は、何でもないように笑う。幼馴染とはいえ、しっかりと気遣いやフォローをしてくれている辺り、本当に優しいと思う。現場が一緒になることが多いが、男女問わず人気を搔っ攫っているイメージがある。
そんなことをぼーっと思っていると、寝落ちたことを機にしていると思われたのか、困ったように眉を下げた湊に優しく頭を撫でられた。今日のドラマの撮影でもあった場面によく似ているが、あの時のような意地悪系のふれあいではなく、本当に心からの気遣いを感じる。
「好きだなぁ」