政略婚の妻に、王は狂おしく溺れる ―初恋の面影を宿す王妃―
胸の奥からまた涙が込み上げた、その時だった。

ラディウス王が、そっと私を包み込む。

「急で申し訳ない。でも、必ず幸せにするから。」

低く落ち着いた声と、彼の体温、そして野を駆ける風のような匂いに包まれ、

荒れていた心が、不思議と静まっていった。

翌日、城内は朝から慌ただしかった。

「ちょうど、白いドレスがありました。」

侍女が大事そうに抱えてきたのは、上品なレースがあしらわれた白いドレスだった。

裾は真っ直ぐに落ちるストレートラインで、華美すぎず、それでいて大人びた気品を漂わせている。

「まあ……素敵。」

思わず声が漏れる。だが、昨日の今日でこれを着ることになるとは。

「それにしても、昨日の今日だなんて……あまりにも唐突すぎますよね。」

侍女たちは手を動かしながら、ひそひそと話し始めた。
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