最強スパダリ吸血鬼が私を運命の人だと言って離してくれない!
屋上につくと、ビュッーーと暖かな風が頬をなでる。





「かげくん……あの噂……他の子の血を吸ったって本当……?」






いてもたってもいられなかった。



どうしても真実が知りたい。





問い詰めたい気持ちと、信じたい気持ちがぶつかり合って、涙がにじみそうになる。






信じたいのに、信じきれない弱い自分がいる。




そんな私にかげくんが一歩近づいた。






「俺はひかり以外の血なんて吸ってない!」




その言葉は力強くて、迷いがなくて。私の胸にまっすぐ届いた。



「信じてほしい。俺が欲しいのはひかりだけだ。ひかり以外の誰かで満たされることなんて、絶対にない」





「……本当に?」




「本当だ。俺はひかりのことしか見てない」




かげくんはいつも私が欲しい言葉をくれる。



私が欲しいときに必ず。



「でもかげくんはいつも余裕そうだし……やっぱり吸血鬼だから私の考えがわかるの?」


「吸血鬼だからじゃない。それに余裕があるわけでもないよ。かっこつけてるだけ。好きな子の前だからね」


その時、ドンッと大きな音が夜空を裂いた。




「ひかり」





かげくんが私の手を取ってそっと引き寄せる。




「俺のそばにいてくれるか?」





「……うん」



次の花火が打ち上がる音に合わせて、かげくんの唇が重なった。



「ひかり……俺、今すごくドキドキしてる――」



いつもならこのタイミングで彼がうさぎになるのに……





何も起きない。





「……あれ?」



私がかげくんを見上げると彼は小さく笑った。





「昔、母さんから聞いたことがあるんだ。運命の人と両思いになるとこの力は消えるって。不思議だよね」



両思い……




両思い……!?!?



「えっ!? それじゃ私ってっ!」




「まだ気付いてなかったの?」





かげくんがクスッと意地悪く微笑む。




「これからちゃんと教えていかないとね。ひかりがどれだけ俺のことが好きかってこと」




夜空には次々と大きな花火が咲く。



私たちは見つめ合って、もう一度だけ花火の下でキスをした。
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