最強スパダリ吸血鬼が私を運命の人だと言って離してくれない!
※ ※ ※

放課後のチャイムが鳴ると同時に、霞くんが駆け寄ってくる。


「ひかりー! 一緒に帰んぞ!」


霞くんってば、幼なじみだからなのか昔から暇さえあれば話しかけてきて。


放課後も毎日一緒に帰ってるんだ。



「うん、いいよ」


そう言ってカバンのチャックを閉めると、霞くんはカバンの肩紐を引っ張ってきた。


「ほら、ボーとすんなよ。さっさと帰ろ。それともまさか、さっきの転校生のこと考えてたんじゃないよな?」



「べ、別に! そんなことないよ!」


すると霞くんがニヤニヤしながら私を見てきた。

「……なに」


「いや〜、お前が男子のことでそんな慌てるとことか見たことないからさ。他の女子みたいにアイツのこと気になるとか?」

口角を上げ、からかうような口ぶりで話しかけてくる霞くん。

「もう……違うってば」


霞くんって普段からこうやっていじってくるの。


ほんと、私のことなんだと思ってるんだか。


いつもこの調子なんだから……

「そういえばお前さ、今日も朝練してたわけ?」


「うん。もう日課みたいなものだからね。それよりどうしたの? 霞くんからそんなこと言ってくるなんて珍しいね」


霞くんの言動に呆れていると、なぜだか朝練のことについて聞かれた。


「……別に。たまにはいいかなって。ひかりと稽古すんの久しぶりだし」


「ほんと? 確かに一緒に稽古するの久しぶりだね。そもそも家にもあまりこなくなったっけ」


小学生のころは毎日うちにきていたけど、中学に上がってからかな?急に霞くんが家に来なくなった。

学校では相変わらずからかってくるし、そこは昔と変わらないけど……


どうして急にこんなことを言い出したんだろう。



「……ああ、そうだな。――行っていい?」


「うん、もちろんいいよ。じゃあ一緒に……」

久しぶりに霞くんが家に来てくれることになったことでワクワクした気持ちになり、つい嬉しそうに微笑んでしまいそうになった。

けど、そこで重要なことを思い出した。



(あ……! 空手の話をするまで忘れてた!! 空手ノート、確か休み時間の時にカバンから取り出したはず)


もしかして、と思ってカバンの中を探すと。


……やっぱりない!

「どうした?」


「空手のノート、教室に忘れちゃったみたいなの」


「またかよ。ほんとひかりって、昔からドジだよなぁ。じゃあ、校門前で待っててやるよ」


そう言ってくれた霞くんだけれど、待たせるのも悪いし先に家で待っててもらおうかな。

霞くんなら家に入れてくれるよね。


「もー大丈夫だよ。先帰ってて!」


霞くんの言葉を背に、私は小走りで教室へ引き返した。
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