紺碧のアステリズム
「《桜ぁ…! 桜とお別れなんて嫌だよぉ…っ!》」
長いようで短かった1週間が終わった。泣きじゃくるアダム君と目線を合わせると、アダム君はギュッと抱きついて、また泣いた。
「《百合子さん、桜さん、お世話になりました。》」
ジェームズさんが美しいお辞儀を見せてくれる。
「皆さんお気をつけて。 最後までお見送りに行けないことを許してね。 兄さんも元気で。」
悪目立ちすることを恐れる母の要望で、私達は宿舎でお見送りとなった。
「百合子も元気で。 また近いうちに連絡します。」
「良い連絡なら、いつでも。」
じっと見つめ合う伯父と母。その雰囲気があまり和やかではないような気がして、間に入ろうとしたところをアダム君に遮られる。
「《桜!》」
頬に、小さな可愛らしい唇がチュッと触れる。
「《また…会えるよな…っ!?》」
伯父がアダム君の言葉を通訳してくれる。
「アダム君…。 きっとまた会えます。 会いましょう。」
私は小指を絡めて歌う。
「…これは指切りというの。 約束は必ず果たそうっていう、おまじないなんですよ。」
レナードさんに連れられて、アダム君は先に馬車に乗り込む。最後に残ったラキアスは、「《またな》」とだけ言って乗り込んだ。
また…か。
そのまたが実現することはないだろうと思うものの、そこには皆触れない。
馬車が去り、母が言う。
「さぁ、私達も帰りましょう。」
現実へ。