紺碧のアステリズム
2 花選び
「桜さん、お久しぶりね。」
「体調はいかがですの?」
「はいはい、そこを通してくださる?」
久しぶりの登校に、私の周りには人集りができる。その合間を縫って珠子が現れた。
「おかえりなさい。 間に合ってよかったわね。」
「間に合う?」
どういうこと?と首を傾げる私の手を引いて、珠子は席まで連れて行ってくれた。
「今日から花選びが始まるのよ。」
「えっ?」
思わぬ言葉に聞き返す。
花選び。それは、3年に一度、将来を担う青年達が女学校へ来て、未来の花嫁探しをする行事のことだ。そうしてより優れた気導の使い手を生み出し、繁栄させてきたのだ。
「花選びは来年のはずじゃ…?」
「お上から通達があったらしいわ。 これからは毎年開催されるんですって。」
珠子はきょろきょろと周囲を見渡し、声を潜めて続ける。
「…戦が始まるって噂よ。」
そんな…。
そこへ先生が教室へ入ってきて、花選びについて説明を始めた。学校同士の交流として、今日から1週間は私達の学校で、来週からは向こうの学校で、共に学ぶのだという。しかしそれは表向きの理由だと、誰もがわかっていた。
先生の案内で入ってきた青年達が、にやにやとこちらを品定めするような視線を送ってくる。
「皆さん、仲良くしてくださいね。」
先生の言葉に、私はごくりと息をのんだ。