紺碧のアステリズム



お昼休み。校内は騒然としていた。普段は女生徒しかいない校舎に、体格のいい男子生徒がおり、その男子生徒が女生徒を追いかけまわしているのだ。



「…なんか嫌ですわね。」



校舎の隅。隣でお弁当をつつく珠子がぼそりと呟く。



「気導の使い手といえど、目に余るわ。」

「…そうですね。」



つい最近まで一緒に過ごしたジェームズさんやレナードさん、ラキアスと比較してしまう。彼らは初対面の時から紳士的であった。こんな風に、己の力をひけらかし、女性に上から物言うような態度をとることはなく、共に過ごす時間は穏やかなものだった。



「桜は大丈夫? 変なのに目をつけられていたけれど。」

「あぁ…。」



私もお弁当を頬張りながら、午前の授業を思い返す。隣に座った男は、昨年まで同じ学び舎で学んだ、珠子とも顔馴染みの人だったのだが…その席を横取りしてきた人がいたのだ。



『お前、野々宮の家の女だろ?』



体格も一際大きい彼は、友人を追いやり、どかりと隣に腰掛けた。



『光栄に思え。 お前は矢嶋家の嫁になるんだ。』



にやりと笑った粗暴な男の顔を思い出し、大きな溜め息が漏れる。



「矢嶋家といえば、着物を卸していたわよね? なかなか大きな家よね。」

「そうですね。 父から聞いたことがあります。 あそこの気導は強力だと。」



一体どんな力を持っているのか。他の男子生徒も彼を恐れているのか、半ば言いなりのようになっていた。
そんな人から逃れるように、私は珠子とこうして隠れてお昼を食べているのだ。



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