十六夜月のラブレター
北欧風の4人掛けのダイニングテーブルに向かい合って座り、2台のパソコンを使ってそれぞれ作業する。

入谷さんに渡された膨大な営業資料を見ながらデータ入力やグラフや表を作成していった。

今までの入谷さんの労力を無駄にしてしまったことがただただ心苦しくて。

時が経つのを忘れてひたすらに。

昨日の夜も入谷さんにあんな態度を取ったことを一晩中後悔してたからあまり寝てなかったけれど、申し訳なさと緊張感で一杯だった。

無我夢中でパソコンに向き合っていると、不意に頭の上にぽんと温かい重みを感じた。

物理的には量れないようなやさしくて温かい重み。

見上げるとスーツのジャケットを脱いでワイシャツの台襟ボタンを外し袖を腕まくりした入谷さんが、私の頭をぽんぽんしてくれていた。

包み込んでくれるような眼差しで微笑みながら。

「がんばりすぎだよ、月見ちゃん」

耳を疑った。イマナンテ? ツキミチャン?

「休憩もしないでさ。午前1時過ぎたよ」

「もうそんな時間!」

「あとは俺一人で大丈夫。タクシー呼ぶから帰った方がいいよ。心配だったら俺も一緒に行くから」

「でも、あともう少しで全部入力できそうです」

「それなら尚更あとは俺一人でできるから」

たしかにこれ以上ここにいても迷惑になるだけかもしれない。

「わかりました。今日は本当にすみませんでした」

「そんなに謝らないで」

「でも、私が嫌われてるからかも……」

「どうして嫌われてるの? 俺のせい?」
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