十六夜月のラブレター
これ以上誰かに私が責められないように。実際、柴田さんも私を責めるどころか心配してくれた。

なぜUSBが失くなったのか犯人捜しはしないと決めたから、この件に関してはすべて私の責任。

再び反省して入谷さんのプレゼンが上手くいくよう心から願った。

一日の仕事を終えて帰宅すると昨日、一昨日とゆっくり眠れなかったから早めに寝る準備をする。

お風呂に入って髪を乾かしていると、スマホに入谷さんからメッセージが来た。

(お疲れ。プレゼンうまくいったよ!)

(よかった! お疲れさまでした!)

(二人で打ち上げな。今週末はどう?)

(はい! 大丈夫です)

約束通り、週末の休日に入谷さんと二人で打ち上げをすることになった。

もちろん私にとって一番の目的は、ちゃんといろいろ謝ったうえで雪見について話すこと。

入谷さんが雪見に会いたいならそのセッティングをすることが、私ができる一番の罪滅ぼしだから。

週末の夜となり打ち上げの待ち合わせ場所に行くと、いつものスーツではないカジュアルな私服の入谷さんが待っていた。

私服でも爽やかでカッコよくて通りかかった二人連れの女子高生が振り返っていたほど。

仕事の時と変わらない地味な服装でやってきた私に入谷さんは笑顔で大きく手を振ってくれた。

さっきの二人連れの女子高生が私を見て「なんであのイケメンにこの人?」みたいな顔をしたけれど、もうあんな醜態は二度と晒さないと決めていたから気にしないでいられた。

入谷さんが連れて行ってくれたイタリアンレストランは洞窟のような内装で、薄暗い空間に浮かび上がる燭台の灯りがとてもキレイ。
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