十六夜月のラブレター
「いえそうじゃなくて。否定するのも申し訳なかったので」

「はいはい」

ダメだ、完全にからかわれてる。でもモテ男の入谷さんに勝てる見込みはない。

「これからどうする? どこかに飲みに行く?」

「入谷さん、毎日仕事も遅くまでしてるし休日も私とお仕置きデートなんかしてて、引越しの荷解きとか終わったんですか?」

「全然。毎日その日暮らし」

「私、手伝いましょうか?」

「マジで! めっちゃ助かる! じゃ、晩飯は俺んちでウーバーにしよ」

入谷さんのマンションでウーバーで夕飯を頼んで食べたりしながら、一緒に積み上げられた段ボールの荷解きをした。

勝手に開けるのは失礼かと開ける前に確認していたけれど、入谷さんはなんでも開けていいよと言っていた。

だからもう聞かずに「メモリー」と書かれた段ボール箱を開けようとした時だった。

「それはダメ!」

段ボール箱に覆い被さるようにして入谷さんが防御する。

「あはは、そんなに必死に防御しなくても。わかった! 元カノとかの写真ですか?」

「そんなんじゃないけど。たぶん見たら君、引くよ?」

この鬼気迫る感じ。独身男性の一人暮らしだし見ない方が身のためかも!

「見ない方向で。あ、もう22時過ぎてる! そろそろ帰りますね」

「家まで送ってく」

「大丈夫です。一人で帰れますから」

「ダメ。何かあったら心配だから」

「入谷さんて、ほんと優しいですよね」

「月見ちゃんだからだよ」

「え?」
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