十六夜月のラブレター
「あ、柴田さんから飲み会の誘いが来た。今日の夜か」

私の2年先輩の柴田さんはキラキラ女子の皆さんの中で最も自他共に認める美人で、私は秘かにキラキラ女王と呼んでいる。

「深沢さんも来るでしょ?」

入谷さんのとぼけた問いかけに大きく首を横に振る。

「行くわけないです。ていうか、そもそも誘われません」

「なんで?」

「なんでって、私、地味なコミュ障なんで。あんなキラキラ女子さんたちの中には入れません」

「そうなんだ」

「はい、そうです」

「じゃあ、明日の夜は?」

「入谷さんが今どこで会ったか教えてくれれば、明日の夜会う必要もないですよ?」

すると入谷さんの笑顔は忽ちに消え、拗ねた男の子のように口を尖らせた。

「なんだよ、そっちが俺のこと忘れてるくせに」

なぜだか完全に主導権を握られて怯んでしまう。

「そうでした、ごめんなさい」

「わかれば良し。じゃあさ、君が俺のこと思い出してくれたらご褒美あげる」

「ご褒美?」

「抱えてる投資の損益、取り戻すアドバイスしてあげる。俺、大学は経済学部だったし高校生の時から投資やってるからそれくらい簡単だよ」

「本当ですか!? 私、絶対に入谷さんのこと思い出してみせます!」

「なんか急にやる気になったね。ちょっぴり複雑だけどまあいいや。じゃあ、明日の夜、楽しみにしてるから」

スマホでお互いの連絡先交換をしたあと入谷さんは爽やかに去って行った。
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