十六夜月のラブレター
昼休憩が終わり午後の業務が始まってからは、入谷さんのことが気になって仕方がなかった。

一体どこで会ったのだろう? 

フロアで様々な人と会話をしている入谷さんを目で追う。

スーツの着こなしもキレイだし誰に対しても爽やかな笑顔で接して会話もスマートだ。

大阪本社で営業成績が2年連続トップだったのも頷ける。

すると私の後ろのデスクのキラキラ女子の一人である前川さんが、キラキラ女王の柴田さんに話しかける声が聞こえてきた。

前川さんは入社2年目だけどその華やかさで入社6年目の私より圧倒的に存在感は上位だ。

「柴田さん、大阪本社の同期の子に聞いたんですけど、入谷さんて最年少課長昇進の打診を蹴って、こっちの東京支社に異動願い出してきたそうですよ」

「うちの会社はあくまで東京は支社で大阪が本社なのに。なぜかしら?」

「大阪では彼女がいるみたいな話は全くなかったそうです」

「あれだけのイケメンなのに? となると、彼女がいてもひた隠しにしてるか、余程理想が高いのか」

「誰が入谷さんを落とせるのか楽しみですね」

「もう営業部だけじゃないわよ。東京支社中の女子社員が狙っているはず」

改めて入谷さんの人気の高さとともに大阪から来ていることを再認識した。

私は生まれも育ちも東京で、大阪には縁も所縁もないし知り合いさえいない。

本当にどこで会ったんだろう? 

そう考えながら無意識に入谷さんを見てしまい、気付いた入谷さんと目が合ってしまった。

顔を背けようとしたけれどそれより先に入谷さんは優しく微笑んでくれた。

しかし、その様子を柴田さんに見られてしまい私は慌ててデスクのパソコンに向かい、二度と入谷さんを見ることはしなかった。
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