夜探偵事務所と八尺様
第七章:70年目の真実
第七章:70年目の真実
【深妙寺・朝】
仁に別れの挨拶を済ませ
夜と健太は黒いテスラに乗り込んだ
後部座席に乗り込んだ夜を包み込むように
未来的なファルコンドアが静かに閉まる
夜は運転席の健太に言った
夜:「鎮女村に行くわよ」
健太:「えっ!?」
健太:「もう事件は解決したんじゃ…」
夜:「いいから」
その有無を言わさぬ口調に
健太は黙ってハンドルを握るしかなかった
【鎮女村・民宿旅館渓山荘】
宿の食堂で
あの老婆が一人
静かにお茶をすすっていた
夜は音もなく
その背後に近づくと
老婆の耳元で
囁くように、こう言った
夜:「ぽっぽっぽ……ぽ」
老婆:「ヒィーーッ!」
老婆は椅子から転げ落ちんばかりに驚き
夜を振り返った
その顔は恐怖に引きつっている
夜はニヤリと笑う
老婆:「な、なんだいあんた!まだおったんかい!」
夜:「ええ、戻って来たのよ」
夜:「……やってくれたわね、女将さん」
老婆:「はて…?なんのことやら、さっぱり」
夜:「とぼけないで」
夜:「女将さん、あなたはシズコさんの姪御さん、それとマモル君の従兄妹…でしょ?」
その一言に
老婆の顔から血の気が引いた
夜:「私は探偵なの」
夜:「……舐めないで」
夜は、悪戯っぽく笑った
老婆は、観念したように
深く、深いため息をついた
老婆:「……バレたか」
夜:「今日は、ただの観光よ」
夜:「もう一泊して行くわ」
三人は再び、あの食堂の座卓を囲んでいた
夜は、老婆に全てを話した
九条家での、シズコとの最後の対話
彼女の魂が、70年の時を経て
ようやく救済されたことを
夜:「……あなたの伯母さんは」
夜:「もう苦しんではいないわ」
夜:「マモル君の元へ、旅立って行った」
その話を聞きながら
老婆の、皺だらけの目から
ぽろぽろと
大粒の涙がこぼれ落ちていた
それは
70年間、誰にも言えずに胸に秘めてきた
伯母への、哀悼の涙だった
【深妙寺・朝】
仁に別れの挨拶を済ませ
夜と健太は黒いテスラに乗り込んだ
後部座席に乗り込んだ夜を包み込むように
未来的なファルコンドアが静かに閉まる
夜は運転席の健太に言った
夜:「鎮女村に行くわよ」
健太:「えっ!?」
健太:「もう事件は解決したんじゃ…」
夜:「いいから」
その有無を言わさぬ口調に
健太は黙ってハンドルを握るしかなかった
【鎮女村・民宿旅館渓山荘】
宿の食堂で
あの老婆が一人
静かにお茶をすすっていた
夜は音もなく
その背後に近づくと
老婆の耳元で
囁くように、こう言った
夜:「ぽっぽっぽ……ぽ」
老婆:「ヒィーーッ!」
老婆は椅子から転げ落ちんばかりに驚き
夜を振り返った
その顔は恐怖に引きつっている
夜はニヤリと笑う
老婆:「な、なんだいあんた!まだおったんかい!」
夜:「ええ、戻って来たのよ」
夜:「……やってくれたわね、女将さん」
老婆:「はて…?なんのことやら、さっぱり」
夜:「とぼけないで」
夜:「女将さん、あなたはシズコさんの姪御さん、それとマモル君の従兄妹…でしょ?」
その一言に
老婆の顔から血の気が引いた
夜:「私は探偵なの」
夜:「……舐めないで」
夜は、悪戯っぽく笑った
老婆は、観念したように
深く、深いため息をついた
老婆:「……バレたか」
夜:「今日は、ただの観光よ」
夜:「もう一泊して行くわ」
三人は再び、あの食堂の座卓を囲んでいた
夜は、老婆に全てを話した
九条家での、シズコとの最後の対話
彼女の魂が、70年の時を経て
ようやく救済されたことを
夜:「……あなたの伯母さんは」
夜:「もう苦しんではいないわ」
夜:「マモル君の元へ、旅立って行った」
その話を聞きながら
老婆の、皺だらけの目から
ぽろぽろと
大粒の涙がこぼれ落ちていた
それは
70年間、誰にも言えずに胸に秘めてきた
伯母への、哀悼の涙だった