聖騎士様と始める異世界旅行事業 ~旅行会社の会社員でしたが異世界に転生したので起業します~
第三章
翌日。王都の宿屋に集合したセシリーナたちワールドツーリスト社の面々は、今後の方針について打ち合わせをしていた。セシリーナは昨日の王都での会議の内容をかいつまんで説明する。
この場にいるアベル、ケルヴィン、ヒースのうち、最初に口を開いたのはアベルだった。
「なるほど、王都支店か。これからツアーを組んで世界中を飛び回るとしたら、王都に拠点をつくるのは理にかなってるよな」
「そうですね。ツアー毎に毎回シュミット村に戻っていたのでは時間も物資もかかってしまいますし」
ケルヴィンが同意する。ヒースが頷いた。
「王都支店を起点にするのは良いアイディアだと思うよ。僕自身、教会本部が王都にあるから動きやすくて助かるよ」
「王都支店の不動産はサージェント商会で手配いたしますので」
ケルヴィンが片眼鏡を押し上げた。事業拡大に伴い、商会のほうで人材斡旋もしてくれる手筈になっている。まもなくシュミット村本店にも王都支店にも新しい社員が配属になるだろう。どんどん会社が拡大していく感触を感じてわくわくする。
これから先、竜王に真っ向勝負を仕掛けていくにあたって大変なこと、不安なこともあるはずだ。けれどもそれ以上に楽しいことも嬉しいこともありそうに思えた。
アベルが顎に手を当てる。
「王都支店の始動と同時に俺たちがやるべきことは、王都遠征ツアーの復路と次のツアーの企画だろうな」
「ええ。ツアーの主目的は人や物を流動させて中央大陸の隅々まで経済を活性化させることになりそうですね。それから道中で竜王と聖女を探すことですか」
「向こうも僕たちに接触してくることが考えられるから、探す手間が省けるかもしれないけどね」
ケルヴィンの言葉にヒースが言い添える。
ヒースの言うように今後竜王が襲撃してくることは前例があるだけにあり得ることだろう。それをピンチととらずに聖女を取り返すチャンスにしていけたらと思う。あとは旅行事業を通して竜王との戦いで有利に進める材料でも見つけられるといいのだけれど。
(うーん、過去の聖騎士と竜王の領土争いで関連のある場所に行けばなにか材料が見つかるかな)
セシリーナは皆の顔を見回す。
「私から新しいツアーの企画について提案があるんですが、打倒竜王を果たすためには、まずは先人たちが遺してくださった戦いの痕を見に行くべきだと思うんです。そこに私たちが知らないヒントがあるかもしれないから」
「戦いの痕。つまり人間と魔獣が領土争いをした現場の形跡を見てまわるということ?」
「はい。具体的には、次のツアーは実際に魔獣がはびこっている洞窟や遺跡に行ってみるのはどうかと思うんです。いわゆるダンジョン攻略ツアーです」
「ほー、面白いな。これから皆で一丸となって竜王に立ち向かわないといけないからな。ダンジョン攻略ツアーを組んで魔獣と戦う意欲のある者を募るといいかもな」
アベルに同意するふうにケルヴィンも言い添える。
「ええ。今後のことを考えるとダンジョン攻略を通じて人間側の能力を底上げするべきでしょう。ダンジョンは魔獣が出現しますから必然的に戦闘になるでしょうし」
「そのぶん怪我をするリスクもあるから、僕たちのいずれかが添乗員として用心棒についたほうがいいと思うけれどね」
ヒースが背もたれにもたれかかりながら言う。みんな満場一致でうなずいた。
ダンジョンツアーが現実味を帯びてきた。民間人は、洞窟や遺跡といった魔獣の出没する場所などよっぽどの用事がなければ近づかない。つまり魔獣に耐性がないのだ。そこでダンジョン攻略ツアーを組む。そうすれば今までダンジョンに興味はあったけれど危険で近づけなかった人たちが参加してくれるかもしれない。それを繰り返せば民間人に魔獣の耐性ができる。それはひいては魔獣率いる竜王に対抗する力になるだろう。
「ダンジョン攻略ツアーを企画するなら、初めての試みだし参加者を限定したほうがいいね。ある程度魔獣との戦いの経験がある者――兵士や傭兵や冒険者に限定にするとかね」
ヒースの言うとおりだった。もしも非力な女性や子どもを参加させてしまって、ダンジョンで予期せぬ魔獣と遭遇したときに守りきれなかったら大変だ。それならば多少魔獣と交戦した経験のある人たちに参加を限定したほうがいい。いざというときに自分の身は自分で守ってくれそうだから。比較的安全なルートがわかってきたら武器を持たない人たちにも参加してもらえばいいのだ。なにも焦る必要はない。
アベルが膝を叩いた。
「そうと決まれば、シュミット伯爵やサージェント会長、それからローレンス騎士爵にダンジョン攻略ツアーの所感を聞きに行かないか。企画を通すにしても第三者の意見を聞いてみないとな」
「賛成です!」
セシリーナは立ち上がる。新しい企画にわくわくと胸を躍らせながら。
この場にいるアベル、ケルヴィン、ヒースのうち、最初に口を開いたのはアベルだった。
「なるほど、王都支店か。これからツアーを組んで世界中を飛び回るとしたら、王都に拠点をつくるのは理にかなってるよな」
「そうですね。ツアー毎に毎回シュミット村に戻っていたのでは時間も物資もかかってしまいますし」
ケルヴィンが同意する。ヒースが頷いた。
「王都支店を起点にするのは良いアイディアだと思うよ。僕自身、教会本部が王都にあるから動きやすくて助かるよ」
「王都支店の不動産はサージェント商会で手配いたしますので」
ケルヴィンが片眼鏡を押し上げた。事業拡大に伴い、商会のほうで人材斡旋もしてくれる手筈になっている。まもなくシュミット村本店にも王都支店にも新しい社員が配属になるだろう。どんどん会社が拡大していく感触を感じてわくわくする。
これから先、竜王に真っ向勝負を仕掛けていくにあたって大変なこと、不安なこともあるはずだ。けれどもそれ以上に楽しいことも嬉しいこともありそうに思えた。
アベルが顎に手を当てる。
「王都支店の始動と同時に俺たちがやるべきことは、王都遠征ツアーの復路と次のツアーの企画だろうな」
「ええ。ツアーの主目的は人や物を流動させて中央大陸の隅々まで経済を活性化させることになりそうですね。それから道中で竜王と聖女を探すことですか」
「向こうも僕たちに接触してくることが考えられるから、探す手間が省けるかもしれないけどね」
ケルヴィンの言葉にヒースが言い添える。
ヒースの言うように今後竜王が襲撃してくることは前例があるだけにあり得ることだろう。それをピンチととらずに聖女を取り返すチャンスにしていけたらと思う。あとは旅行事業を通して竜王との戦いで有利に進める材料でも見つけられるといいのだけれど。
(うーん、過去の聖騎士と竜王の領土争いで関連のある場所に行けばなにか材料が見つかるかな)
セシリーナは皆の顔を見回す。
「私から新しいツアーの企画について提案があるんですが、打倒竜王を果たすためには、まずは先人たちが遺してくださった戦いの痕を見に行くべきだと思うんです。そこに私たちが知らないヒントがあるかもしれないから」
「戦いの痕。つまり人間と魔獣が領土争いをした現場の形跡を見てまわるということ?」
「はい。具体的には、次のツアーは実際に魔獣がはびこっている洞窟や遺跡に行ってみるのはどうかと思うんです。いわゆるダンジョン攻略ツアーです」
「ほー、面白いな。これから皆で一丸となって竜王に立ち向かわないといけないからな。ダンジョン攻略ツアーを組んで魔獣と戦う意欲のある者を募るといいかもな」
アベルに同意するふうにケルヴィンも言い添える。
「ええ。今後のことを考えるとダンジョン攻略を通じて人間側の能力を底上げするべきでしょう。ダンジョンは魔獣が出現しますから必然的に戦闘になるでしょうし」
「そのぶん怪我をするリスクもあるから、僕たちのいずれかが添乗員として用心棒についたほうがいいと思うけれどね」
ヒースが背もたれにもたれかかりながら言う。みんな満場一致でうなずいた。
ダンジョンツアーが現実味を帯びてきた。民間人は、洞窟や遺跡といった魔獣の出没する場所などよっぽどの用事がなければ近づかない。つまり魔獣に耐性がないのだ。そこでダンジョン攻略ツアーを組む。そうすれば今までダンジョンに興味はあったけれど危険で近づけなかった人たちが参加してくれるかもしれない。それを繰り返せば民間人に魔獣の耐性ができる。それはひいては魔獣率いる竜王に対抗する力になるだろう。
「ダンジョン攻略ツアーを企画するなら、初めての試みだし参加者を限定したほうがいいね。ある程度魔獣との戦いの経験がある者――兵士や傭兵や冒険者に限定にするとかね」
ヒースの言うとおりだった。もしも非力な女性や子どもを参加させてしまって、ダンジョンで予期せぬ魔獣と遭遇したときに守りきれなかったら大変だ。それならば多少魔獣と交戦した経験のある人たちに参加を限定したほうがいい。いざというときに自分の身は自分で守ってくれそうだから。比較的安全なルートがわかってきたら武器を持たない人たちにも参加してもらえばいいのだ。なにも焦る必要はない。
アベルが膝を叩いた。
「そうと決まれば、シュミット伯爵やサージェント会長、それからローレンス騎士爵にダンジョン攻略ツアーの所感を聞きに行かないか。企画を通すにしても第三者の意見を聞いてみないとな」
「賛成です!」
セシリーナは立ち上がる。新しい企画にわくわくと胸を躍らせながら。