メシマズな彼女はイケメンシェフに溺愛される
陽音が三十歳の誕生日を迎えるその日、また試食に誘われた。
いつかのようにテーブル席でコース料理をふるまわれ、『ハッピーバースデー』と書かれたケーキを出されておいしくいただく。
食事のあと、彼はワインボトルとふたつのグラスを持って来て陽音に言った。
「今日は食後酒をご一緒させてもらっていいですか? もちろん俺のごりで」
「はい」
頷くと、彼は嬉しそうに正面に座った。
料理の感想を話し、彼の仕事の苦労話を聞き、ほどよく酔いがまわったころだった。
「初めて会ったとき、どうしようかと思ったんですよ」
手にしたグラスを眺め、彼は言う。
「私、泣いちゃいましたもんね」
「そうです。事情を聞かれたい人なのか、放っておいてほしいのか。わからなかったから、いつも以上に思いをこめて料理しました」
そう語る微笑みはすべてを包むように優しく、陽音も頬をゆるめる。
「ありがとう」
「帰るときも顔を伏せたままだったから、つい新作の披露が……って誘ってました」
「実は泣いた顔を見られたくなくて、伏せてました」
あはは、と照れ隠しに笑い、陽音は続ける。
「あれって、本当は新作じゃないですよね?」
「バレてました?」
「すごくこなれた感じがしましたし、話の辻褄が合ってなかったですよ。どうして嘘を?」
「心配だったんです、あのまま遠くへ行ってしまいそうで。また来てくれたら安心できるから……俺のエゴですよ」
そんなに心配してくれたのに、変に励ましたりせず、そっと包むように気遣ってくれたのが嬉しい。
酔いが手伝って、陽音の口は軽くなる。
いつかのようにテーブル席でコース料理をふるまわれ、『ハッピーバースデー』と書かれたケーキを出されておいしくいただく。
食事のあと、彼はワインボトルとふたつのグラスを持って来て陽音に言った。
「今日は食後酒をご一緒させてもらっていいですか? もちろん俺のごりで」
「はい」
頷くと、彼は嬉しそうに正面に座った。
料理の感想を話し、彼の仕事の苦労話を聞き、ほどよく酔いがまわったころだった。
「初めて会ったとき、どうしようかと思ったんですよ」
手にしたグラスを眺め、彼は言う。
「私、泣いちゃいましたもんね」
「そうです。事情を聞かれたい人なのか、放っておいてほしいのか。わからなかったから、いつも以上に思いをこめて料理しました」
そう語る微笑みはすべてを包むように優しく、陽音も頬をゆるめる。
「ありがとう」
「帰るときも顔を伏せたままだったから、つい新作の披露が……って誘ってました」
「実は泣いた顔を見られたくなくて、伏せてました」
あはは、と照れ隠しに笑い、陽音は続ける。
「あれって、本当は新作じゃないですよね?」
「バレてました?」
「すごくこなれた感じがしましたし、話の辻褄が合ってなかったですよ。どうして嘘を?」
「心配だったんです、あのまま遠くへ行ってしまいそうで。また来てくれたら安心できるから……俺のエゴですよ」
そんなに心配してくれたのに、変に励ましたりせず、そっと包むように気遣ってくれたのが嬉しい。
酔いが手伝って、陽音の口は軽くなる。