メシマズな彼女はイケメンシェフに溺愛される
問題が起きたのは、夜のことだった。
二階の住居に帰った直後、彼は左腕の下腕をさすって言う。
「俺、腕を痛めたみたいだ」
陽音は慌てた。
「大丈夫? 病院へ行く?」
「そこまでじゃない。一晩休めば大丈夫だと思うけど、ごはんを作れそうにない」
いつもは仕事中に彼がまかないを作ってくれるが、今日は忙しくてその暇がなかった。そういうときは家に帰ってから作ってくれるのが常だった。
「じゃあデリバリーとる?」
陽音がスマホをとると、彼は首をふった。
「君の手料理が食べたい。昨日と同じメニューでお願い」
「そんな……」
初めてのお願いに、陽音はうつむく。
「今日だけでいいから」
ダメ押しに、陽音は渋々頷いた。
「今日だけだよ」
答えると、彼は顔を輝かせた。
ひとりならさっと動けるのに、びくびくして作業が遅くなった。
出来上がったぶかっこうな適当オムレツやじゃがいもたちを、解凍したご飯とともに並べ、一緒に食卓につく。