メシマズな彼女はイケメンシェフに溺愛される
 翌朝、彼は珍しく陽音が目覚めるのを待っていた。
「おはよう、陽音」
 彼の声に迎えられ、耳が幸福だった。穏やかな微笑は眼福だ。

「陽音は俺だけを見ていればいいから」
「……うん」
 答えた直後、ぎゅっとだきしめられる。なめらかな肌を全身に感じ、彼の胸に頬をすり寄せる。

「陽音、そんなことされたら抱きたくなる」
「そ、そういうつもりじゃ……」
「わかってる」
 くすくすと笑う顔は、カーテン越しの朝陽をあびてまばゆかった。



 異変を知ったのは一週間後の金曜だった。
 来店した絢子が、食事のあとに言った。
「グルメーズの口コミ、見た?」
 快活な彼女にしては歯切れが悪く、陽音も乃蒼も修造も首をかしげた。

「なにかありましたか?」
「口コミがおかしいの」
 スマホを差し出され、「お借りします」と乃蒼が受け取り、陽音と覗き込む。

「なにこれ!?」
 陽音は思わず声をあげた。乃蒼は嫌悪に眉を寄せている。
『最悪の店。汚くてメシマズ。星ひとつも無理』
『シェフがいけすかない。客の悪口を言う。料理は豚の餌以下』
『金の無駄。食材に謝れ。ゴミを作るな』
 そんなレビューばかりが並び、以前は星4・5だったのに2・3にまで下がっている。
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